暮らしの造形 X

会期(11.17 tue 11.25 wedは休廊となります)

2020.11.14 sat–11.29 sun / 11:00–18:00

小澄正雄・金森正起 在廊日

11.14 sat 11.15 sun

小澄正雄

1979
熊本県の辺境 道路信号もコンビニもなく、夜は月明かりのみ、猪多めの集落の百姓の家に生まれる
田圃や畑の中 牛・山羊・犬・ネコ・にわとりなどが同じ空間に生活していた
田圃で拾ったガラスのB玉を翳して覗き鳶色のひかりに心奪われてとかいうポエティックな思い出は特にない
農業で使う祖父や親父の作った農具は何かいいなぁと思ったような気もする
子供の頃から絵を描くことや何か作ることは好きなんだと思い込み、中学生時代までは教室にいる絵上手いヤツポジションで何となくやって居た 本当にそこしか褒める場所がないと、学校の先生や友達から褒められて意思疎通していただき、落伍者にならないよう助けてもらって生活する
1995
家から近いヤンキー多めの高校に入学する 美術を教えていた彫刻の先生から「ガラスとかどう?」と言われ、ガラスゥ?と思ったがグラスアートを学べる学校へ入る ガラス工芸の基礎やグラスアートなどを学んだものの、数年間いまいちルサンチマンぽく色々かっこつけていた ヴェネチアンテクニックの技法で工芸的な作品作りをするが、本流のガラス工芸家の亜流にもなれずウロウロする
30歳を過ぎたころ、関西の美術館で無造作に展示してある朝鮮の熊川茶碗を見て何か瓦解しはじめ、また大分や唐津の現代のやきものの作家に会うたび、積み直しと瓦解の繰り返しでやめたくなるもガラス吹くしかなくコップ作る
2012
東京の食器屋の店主に客のフリしてしれっと作ったガラスを見てもらうと和?倭?わ?という意味に日本のガラスというか硝子に触れ、そのあたりを彷徨う
2015
岐阜にて築炉し制作する

金森正起

1975
鉄工所の家に生まれる 家もほとんどない山の中で、父の建てた家で生活する
犬や猫や鶏、銀色の猫柳の記憶
小学生に上がる頃、名古屋市の外れに引っ越しする 絵の教室に行かしてもらうが絵を描いた記憶があまりない ピアノを習いはじめる
近くに池がたくさんある環境で日の出とともに一人で出掛けるほど釣りが好きだった ステンレススプーンを使ってルアーをつくる時、1ミリの穴開けに苦戦
折りたたみナイフの木の柄を刃物や紙ヤスリで削ったりしていたら、たまたま汚い油が染み込んでしまった それを見て、何かを感じハッとさせられた
いろいろと分解するのが好きだったが、直せず良く物を壊していた
中学の授業で作ったブリキのちりとり、真鍮の文鎮、キーホルダーを100点満点だと褒めて貰えたのがとても嬉しかった 古い車の載った雑誌が好きだった
山の中に防空壕らしい洞窟を発見し、松明を持ってよく探検に行く
スノーボードに夢中になり、おもしろい山があると聞くと車中泊しながら廻る
大学卒業後、東北で生活 登山やバックカントリーをしたり、住みたい場所探しをはじめる 静かな雪山に入ると日本も外国もないのではないかと感じる。
2000
愛知、岐阜に現存していた野鍛冶を巡りはじめる 何かを作りたくて色々な作り手を訪ねているうちに鉄の仕事に出会う
2001
松岡信夫氏に弟子入りする 小さい畑で野菜を作ったり、山菜を食べて生活
発掘品のようなアクセサリーを作って、表参道の路上で販売する
2004
自分の作りたいものを見つける為に修行を辞める 田舎に住みたくて、岐阜県の森林組合で働きながら暮らす 少しずつ自分の仕事をはじめる 古物商の免許を取って業者市に行く
2005
名古屋市の外れに仕事場を持ち、鉄で生活道具や建築金物をつくりはじめる
金属の器が、デザートや菓子器の存在で留まるのではなく、普段の食卓で料理を盛る器に、いつの日か使って貰えるようになれたらと思う
様々な素材を試して行き着いた、鉄と琺瑯で食器を作りはじめる
2014
小学生の頃からあった、近くの山の廃墟を手に入れる
2019
小小をはじめる
2020
珈琲カジタの姉妹店チーロバや正木なおさんディレクションの le dessert で、琺瑯の器が使われる

金森の名から、お金が森のようになるかもと少し期待していたがお金ではなく金物が森のようになるだけだと気付く

曖昧の強さ

生活工芸のムーブメントが終わったとか終わってないとか、次は何が出てくるか等の声も聞こえてくるが、そもそも同じ頃に発生した異なる個の小さな群なので、大きな定義付けしかできないものである。それは美術や工芸の枠の外で始まった新しい個の発露であり、バブル期の反動で作家達が作りだしたものは、一見何でもないシンプルな生活道具だった。「個性的な作家」とか「自己表現」という強い存在でなく、生活者としての必要や気づきを突き詰めていく素の個の在り方で、東洋や西洋の思想と文化の影響が見られ、歴史的に見ればそれは島国の日本らしい輸入文化の咀嚼ぶりだった。繋ぎ手や使い手の共感を得るタイミングにも合い、ムーブメントのようなものになったということだろう。
 この「暮らしの造形展」は、生活からどんどん離れていってしまった工芸を引き戻そうとした生活工芸の一面を発展させ、工芸側から美術との壁を崩すことを目的としている。美術界に石を投げるというような大層なことではなく、境界線を紛らかしたいという試みである。2010年の1回目から10年が過ぎ、時代の変容を感じていたところ、興味深い記事を見つけた。
 美術手帖6月号「青柳龍太 我、遭難せり。」で、青柳さんは、明治以降に西洋から入ってきた「個」が日本化して『私なき作家』になり、それに『バブル以降の清貧の流れが加わって、華美ではない、自己主張でもない、美術品でもない、生活工芸の道具』が現れ、『職人でもあり作家でもある個人が、非常に曖昧な境界線の在り方で、消費者をも巻き込んだ緩やかな共同体の空気を敏感に読み取りそれを形にした』と生活工芸を定義しているのである。更に、生活工芸がその曖昧さ故にアートを市井の人々に開き、『日常生活とアートの境界線すら曖昧にする萌芽を育んだ』と述べていて、生活工芸の曖昧さが一つの武器となり、境界線が溶け始めてるというので驚いた次第である。
 さて、この「曖昧」な姿勢を持った作家達と時代がどう変容しているのだろうか。今展の作家を紹介したい。
百草で何回も紹介してきた鉄を中心とした金属作家の金森君は、定番の琺瑯食器の領域を広げただけでなく、消費物として使われてきた金属の古道具への憧憬を形にすることに挑戦し始めた。薄い金属物は叩けば曲がるというように人の身体性を記憶しやすく、雨に当たれば錆びてくる。古道具の一つの特徴は、使われることで用途が曖昧になり、素材の素がむき出しになってくることだが、その良さを再現しつつ作品化した金網や金属たわしのシリーズは、今後どのような展開になっていくか楽しみである。
  企画展に始めて参加してくれた小澄君は、江戸時代の和ガラスを現代に再現し始めた作家である。ガラス作家はアメリカやイタリアの影響を受けて発展してきた歴史が戦後からあり、どうして繊細な和ガラスを古典にしないのか不思議に思っていたが、一つに技術の壁があるとも聞いていた。それを乗り越えた作家がようやく現れたわけだが、型吹きガラスの型を自作し古典に限らず領域を広げつつある。収まらない素の個が見え隠れしており、この企画展をきっかけに逸脱してきたら面白いと思う。二人のコラボ作品もあり、楽しい展覧会になりそうだ。
  若い世代が中堅となり、「曖昧」さがより強く、素材へのアプローチはバリエーションに富んで面白くなってきた。従来の技術や素材の扱い方を磨き、付加価値を高めながら自己表現してきた工芸家とは逆ベクトルで、ボロのような「ワビ化」が工芸に浸透し、作品然としていない脱力感には嫉妬を覚える程である。

安藤雅信

ももぐさカフェ・イベント

タネヲマク(南インド料理)

「境(さかい)を紛らかす」ミールスの日
11.14 sat / 15 sun 11:00–17:00 なくなり次第終了 予約不要

南インドの大衆食、ミールス。
日本でいう定食のような、食後感も優しいタネヲマクさんのお料理を、前展覧会からインドを引き継ぎ、供します。

大皿の中央には長粒米を炊いたライス、豆のスープのダル、具材に旬の野菜や豆を入れたサンバル、酸っぱくて辛いラッサムなどのカレーや炒め物、漬物がぐるりと囲み、それらを境界線を崩しながら、紛らかしながら頂きます。
ミールスの醍醐味は、混ざったことで五味や辛みが混然一体となり美味しさが何倍にも増します。

特製のチャイと共に、インド料理と和食の境をも紛らかすタネヲマクさんのミールスを、お楽しみください。

Profile
タネヲマク
2014年、インドの雑貨などを扱う喫茶店として瑞浪市にオープン。インド旅行の際に出会ったミールスに衝撃を受け、独学で南インド料理を学ぶ。
年内に多治見市へ移転オープンを予定。
instagram: tanecurry

ミモザの日(今月の菓子)

「タルト・タタン」
11.26 wed 11:00–17:00 なくなり次第終了 予約不要

りんごをお砂糖とバターでキャラメリゼし、パイ生地をかぶせて焼きこんだ、フランス郷土菓子。
りんごの旨味がぎゅっとつまったお菓子です。
長野で減農薬栽培をされている小山果樹園さんの “秋映”を使用。

Profile
ミモザ mimosa
修行時代に培ったフランス伝統技法を用いた菓子を製造。 ヨーロッパ郷土菓子の歴史やデザインに魅了され、 本質を損なわぬよう微調整を重ね、ミモザのクラシック菓子として展開。
新鮮で上質なものをすこしずつ、つくりつづけます。
instagram: maison_mimosa

インフォメーション

〒507-0013 岐阜県多治見市東栄町2-8-16
多治見ICより車で10分
JR多治見駅より東鉄バス13分「高田口」下車1km

tel. & fax. 0572 21 3368
http://www.momogusa.jp

momogusa cafe

今回のランチは軽食をご用意いたします。
感染防止のため、店内は間隔を設け席数を減らしております。
これまでカフェをお待ち頂いておりました土間が密になってしまうのを避けるため、お待ちいただく場合は、ギャラリーの展示をご覧いただくか、戸外またはお車の中でお待ちください。
11:00–18:00 (L.O 17:30) メニュー・席の予約不可

schedule

11.30 mon – 12.4 fri 休廊
12.5 sat – 12.20 sun one room exhibition | atelier scrumpcious“winter knit” / 12.8 tue. 9 wed. 17 thu. 18 fri.は休廊
12.21 mon – 1.8 fri 冬季休廊
1.9 sat – 1.11 mon 常設展示
1.12 tue – 1.15 fri 休廊
1.16 sat – 1.31 sun 百草冬百種展