長谷川清吉展

DM

1982年名古屋市生まれ

2001»
イギリスのノッティンガム美術大学を目指し渡英、ノッティンガムの語学学校に入る。休日にロンドン観光に行って気が変わり、ロンドンの語学学校に移る。授業がないときは散歩好きなのもあり街をよく歩いた。結局ロンドンの街に惹かれチェルシー美術大学の彫刻科に入る。

2003»
ロンドンでの生活に慣れてきて、一番楽しく感じていた時期にふとこのままでいいのかと思うようになる。その頃には学校はあまり行かず、ほぼ遊んでいるような生活だった。小さい頃から家の仕事を継ぐつもりだったし、ロンドン生活は楽しいが、さすがにこのままただ楽しいだけでは無意味かと思い、学校を辞め日本に帰る。家の仕事を始め、心配していた事はすぐに払拭された。拍子抜けするくらい家の仕事に気負いなく入れ、楽に感じた。これが正直な気持ちだった。それだけ肌に合っているという事なのだと思う。家にある先祖の作ってきたもの、大事にされてきた古いものを引っ張り出しては見るようになる。お茶の世界と繋がりがあり、茶道具をよく作る家なので茶道を始める。すぐにこれも肌が合い、のめり込んでいく。

2018»
お茶に使う蓋置を作っている時(天板に足をつけるタイプ)に天板だけで見せても面白いのではと思い、平面作品を作る。家の仕事を始めてから、初めて茶道具以外のものを作り、少し意識が変わる。今まで茶道具を作ってきて、制作中にたまに思う、こんな見せ方もあるよなぁ、面白いかもなぁと思いついていたアイデアを形にしていこうと考えるようになる。茶道具を作るために金工の技術を駆使していた感覚から、もっと金工自体の可能性を求めていく方向性も自分にとって必要な事なのだと今は思っている。

家業にも継げるものと継ぎにくいものがある。僕の勝手な分析では、基礎技術の高い仕事は継ぎやすいが、感性を武器としたものは継ぎにくい。ロックミュージシャンや美術家が良い例で、同じ道に進んだとしても親と同じことをするのはなかなか難しいものだ。かといって家業がある家に生まれると、義務のように自ずと一度は跡を継ぐことを考える。「継がない」つもりでいても寝ている時以外は景色が家業なのだから、何かしら身に備わっているものだろう。尾張文化圏では名のある金工師の家系で、更に作家である両親のもとに長男として生まれた清吉君はどうだったのだろう。
 二十年前に百草を開廊し、名古屋の長谷川家へ通うようになった頃、清吉君はまだ高校生だった。御両親共に個性的な金工作家だからどんな大人になるだろうかと、成長が楽しみだった。その頃の清吉君は美大の彫刻科を目指して予備校に通っていたが、家業には関心がないかのように高校を卒業後ロンドンの美術大学に留学。外の空気を一杯吸って、家に戻って来た。そして迷いもなく金槌を持ち始めた。
 御両親である長谷川竹次郎さん、まみさんの仕事を遠くに置き、長く長谷川家に奉公されていた番頭の村瀬さんの指導を受け、古典的な仕事を受け継いでめきめき腕を上げていった。基礎技術と正統的な茶道具制作から跡継ぎの道に入ったのである。
 そして、十年以上が経ち、そろそろ清吉君が体験してきたロンドンで吸った空気や、彫刻体験が身体性として表れてくるだろうと展覧会を御願いした。彼も茶道具を基礎に新しい作風を広げ始めようとしており、DMの写真にあるような「蜘蛛の巣」や「空き缶」がいきなり出てきて驚いた。 
 しっかりとした基礎技術を身に付けた後に新しい作風と言えば、一般的には非日常的な鑑賞工芸に走るか、崩した生活道具に走りがちだが、彼はそちらに走らず、基礎技術の応用を日常的かつ現代的な題材に転換したのである。そこに美術的感性を見た。透かしという古典的な技術を蜘蛛の巣に活かそうとは、誰が想像したか。茶道具制作を軸にしつつ、長谷川家に新しい個性が上乗せされ、また新たな付き合いが増えて面白くなった。

亭主 長谷川清吉
日時 12月16日(日) ①15時より ②16時より
会場 百草
定員 各会10名(要予約・先着順)
参加費 1000円(抹茶・お菓子付き)
予約開始日 11月21日(水)10時から開始
予約についてはこちらをご参照ください

菓子屋ここのつ(東京)
亭主 安藤雅信
内容 料理二種・菓子二種・初座・中立・後座
日付 12月22日(土)・23日(日)・24日(月・祝)各日 ①11時から14時 ②15時から18時
会場 百草 茶室
定員 各会5名(要予約・先着順)
参加費 15000円
予約開始日 11月24日(土)10時から開始
※予約受付終了